極私的曲紹介 10 その他の舞曲
○ギャロップ
・半音階的大ギャロップ
・半音階的大ギャロップ(簡易稿)
○ポロネーズ
○チャルダッシュ
(行進曲)
・芸術家祝典行進
・勝利行進曲
ギャロップ
2004/01/29
リストのギャロップというと、「半音階的大ギャロップ」が有名ですが、ただの「ギャロップイ短調」 という曲があります。この曲、僕は聴き始めてすぐに魅力を感じました。怪しげに始まり、いろいろ弾いて試しているようにも聞こえる(まるでこのサイトの文章!?)和音、そして、「タッタタ・タタタタ」というメロディーが出てくると、安定感に包まれます(譜例1)。しばらくはこの不思議な世界に浸っていられるな、という感じ。そろそろ飽きるかなぁ、と思う前に新しい仕掛けが出てくるのです。(この様子はまた後日、しっかり聴いて楽譜を見ながら紹介することにします。)まぁ、構成もよく分からず気持ちよく聴いているので、終わるときはアレレ、と思うのですが、この妙な空疎感を忘れるために、この後にもう1曲続けて聴いてみましょう。
(譜例1) ギャロップ S218 調号なし 2/4
…という訳で、始めに書いた「半音階的大ギャロップ」 ♪ です。技巧的に相当のものが要求される曲で、それをサラリと弾いてみせるのを“見て”楽しむための曲、というイメージがあったせいか(実際そうなのかも知れませんが…)、なかなか好きになれませんでした。今は結構好きなのですが、どこがどう難しいのか全く分かりませんので、聴いた感じを簡単に書くことにします。最初のリズムでショパンの「華麗なる大円舞曲」♪ かとドキッとしますが、すぐに半音階のメロディーが始まります。ちょっと軽く、ちょっと怪しく、ちょっと明るく、ちょっと面白いこのメロディーと、もう1つネッケの「クシコスポスト」に出てきそうで出てこない「ダー・ダー、タ・タ・タッ、ダー・ダー、タ・タ・タッ」というメロディー(と、それに似たもの…)の2つが、結局延々と繰り返されるだけ(笑)の曲です。というより、こんな曲に音楽的な物を期待してもダメ…、なのかも。今はここまでしか書けませんので、これも楽譜を見て、そして是非演奏を視る必要があるようです。
「半音階的大ギャロップ」 ♪ S219
"Grand galop chromatique"
2005/04/16
リスト好きならこの曲は知っていると思います。コンサートの人気者リストが聴衆を楽しませるために弾いていた曲。お堅くないクラシック音楽の代表みたいなものです。技巧的にはかなり難しく、普通の人に弾けるものではありません。それをリストがサラーッと猛スピードで弾いてみせる。ホールの熱気が伝わってきそうです。
元々「ギャロップ」(ガロップ)というのは馬の最速の走り方のことで、4脚とも同時に地面から離れるのだそうです。音楽用語としては、19世紀に流行した2拍子の急速な舞曲を指します。英語では、馬の方は“gallop”、踊りは“galop”と、明確に区別されているようです。半音階というのは、ピアノの全ての鍵を(白鍵も黒鍵も)白黒白黒白白黒…と順番になぞっていくような音の配列です。聴いてみれば分かるはずです。そしてそれに「大」をつけて、「半音階的大ギャロップ」(半音階的大ガロップ)。聴いたことのない人にタイトルを聞かせれば、ご立派な音楽だと思われそうですね。
「ハノン快適大ギャロップ」「半ギャ」などと親しまれているこの曲ですが、僕が疑問に思うのは、何故これを「ピアノ名曲集」などというCDに入れないのだろうかということです。「エリーゼのために」や「幻想即興曲」なんかと肩を並べて「半音階的大ギャロップ」。いいじゃないですか。お嬢さま・おばさま方からキャーキャー言われていた19世紀のピアニストたちのイメージは、もっと一般に知られていいと思います。何も知らない子供だって楽しんで聴くだろうし、“楽しいクラシック”の紹介になります。「こんな曲クラシックらしくない」なんて言う人は歴史をよく分かっていないように思います(僕の思い違いでしょうか?)。当時の聴衆は、ヴィルトゥオーゾ・リストに、α波など求めていなかったはず。こういった楽しめる曲がもっと広まることを強く願います。
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○セルジオ・フィオレンティーノ [3:28](9) [Amazon.co.jpの紹介ページへ] [Amazon.comの紹介ページへ] [Amazon.co.ukの紹介ページへ] [Amazon.deの紹介ページへ] [Amazon.frの紹介ページへ] [Amazon.caの紹介ページへ]
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(譜例1) 半音階的大ギャロップ S219 ♭♭♭ 2/4
「半音階的大ギャロップ」 (簡易稿)♪ S219bis
"Grand galop chromatique" (simplified version)
2005/04/16
人気曲「半音階的大ギャロップ」は普通の人には弾けない難曲でした。「わたしにも弾けるようにアレンジしてください」という声が上がったことは容易に想像できます。原曲の数年後にこの簡易稿が出版されました。
技巧のレベルを落とすことは魅力を下げることに当然なります。実際に聴いてみれば、リストがせっかく作ったこの稿が今ほとんど忘れ去られていることも納得いくはずです。原曲を弾ける人には全く必要ありませんし、原曲を弾けないからと言って簡易稿をコンサート等で取り上げるのは格好悪いだけです。コッソリ弾いて楽しむことにしか使えないでしょう。
しかし、僕はこの簡易稿に注目せずにはいられないのです。(だからこそ原曲よりも長く書きます。)
まず気になるのが原曲より半音上がっていることです。弾きやすくしようとしただなんて信じませんよ。僕が弾いてみた限りでは、弾きやすさは全く変わりません。何を言いたいかというと、こちらの方が楽しくありませんかということです。感動のあまり泣き崩れることを狙った曲ではないとは分かるはずです。この調の方が能天気な雰囲気が何倍も出ています。まだ頷きたくないとおっしゃる方、原曲をただ半音上げたこちら(HSKさんのMIDIを機械的に加工したものです)をお聴きください。こちらの方が気が抜けていて楽しく聞こえませんか? さらに、簡易稿を半音下げて原曲の同じ調にしたこちらを聴いてみてください。もう愉快さなどどこにも無く、どこかの練習曲のようではないでしょうか。
調の感覚は人によっても違うだろうとは思いますが、リスト自身それを分かっていたと考えたらどうでしょうか。元の調には威厳・真面目さを感じます。そして、それらからはピアニストの姿が連想できます。楽しんでいる聴衆とは正反対のような過酷な緊張感・ミスへの恐怖、弾けるようになる前にあった練習の日々、そして見事に弾きこなす英雄的ピアニスト。リストとしてはこちらの方に目があったのかも知れません。とすると、簡易稿の方には「おまえらは勝手にヘラヘラ楽しんどけ」というニュアンスが感じられたり。深読みしすぎですね(笑)。
さて、お聴きになった方はお気づきでしょうが、この稿にはもう1つ興味深い点があります。耳慣れないメロディーが入っていますね。「華麗なるワルツ」(3つのワルツカプリース第1番)♪ に出てくるギャロップ(2拍子)です。(正確には「華麗なる大ワルツ――ベルンの舞踏会」から取られた、と言わなければなりません。「華麗なる大ワルツ――ベルンの舞踏会」(Grand Valse di bravura - Le bal de Berne)(S209)が作曲されたのが1836年、これが後に改訂されて「華麗なるワルツ」(Valse de bravoure)(S214/1)(1852年)になります。「半音階的大ギャロップ」は1838年作曲、簡易稿が1840年頃です。)何故リスト先生がこんなものを入れたのかは見当も付きません。「2つ目のトリオ」と称して平然と出てきます。技巧的にあまり変化を加えることが出来ないので、原曲と同じ構成にすると退屈になってしまうと判断したのでしょうか? 「半音階的大ギャロップの簡易稿」として売るというのに別の素材を入れる神経は(現代の感覚では)信じられませんが、アイデアとして面白いとは思います。リストは(あるいは当時の聴衆が)あのメロディーにこのころハマっていたようです。1840年には、「華麗なる大ワルツ」の最後のギャロップをほとんどそのまま取ってきたような「舞踏会のギャロップ」(Galop de bal)(S220)という作品が出版されています。なお、この部分も原曲より半音上げてあります(冒頭部分は変ロ長調→ロ長調)。これはかなり深みがある音になっていて原曲よりもいいと思いましたが、その後のト長調は簡易稿の雰囲気丸出しな感じです。
他にいろいろと細かいところを見ると、「これにより初心者でも弾けるようになるとリスト先生は考えたのか」というのがいくつか出てきます。その中には原曲のままの方がいい(原曲でも弾けるから効果が落ちるだけ)と思われるものもありますし、簡易稿と言ってもまだ難しめの部分が残っていたりします。リストはこういうものを作るのは得意でなかったことが分かります。
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ポロネーズ
2003/9/9
「ポロネーズ第1番」 ♪ は、あちこちで「なぜ有名にならないか、疑問だ」という記述を見て、Amazon.deでハワード第2巻で最初の1分試聴したのですが、そのときの感想は「??」。さほど魅力を感じませんでした。で、実際にCDで全部聴いてみたのですが、そのときも今も変わらず、一番気に入ったのが後半の上品なところ(譜例1)。うまく休符を入れて、4拍子なのに3拍子に聞こえるようにしてあるので、タメているように聞こえます。左手伴奏+右手音階のみの連続、ということで、「3つの演奏会用練習曲」の「軽やかさ」 に似た雰囲気だと思っています。この部分を聴くために11分我慢しているような感じもするのですが、その前の盛り上がる部分もまぁいいでしょう。これは、バラード第2番に次いで2番目に好きな曲ということになっています。
(譜例1) ポロネーズ第1番 S223/1 ♭♭♭ 3/4→4/4
この第1番に比べたら評価が低いようである「ポロネーズ第2番」 ♪ 僕自身はそこまで嫌ってはいないのですが、リストの傑作だとはとうてい思えませんね。なんか、思いつきだけで作っちゃったような感じがします。
チャルダッシュ
2004/01/18
チャルダッシュというのが何物か、僕は知らないのですが、ハンガリーの民族音楽であることには間違いないでしょう。「ハンガリー狂詩曲」とはどう違うのか、というと、これまた僕は分からないのですが、あまり区別はないように思います。タイトルから推考すれば、チャルダッシュは題材そのもの、狂詩曲の方はそれらを組み合わせて面白くしたもの、と言った感じでしょうか?ではチャルダッシュにはリストらしさはないかというと…??う〜ん、僕に分かることじゃありません(笑)。
まぁ、こう深く考えなくても、チャルダッシュが面白いものであるのは確かです。メロディはリストが作ったものなのかそうでないのか分かりませんが、楽しければ良いんです(爆)。
という訳で、最初に紹介するのが「チャルダッシュ」 ♪ 。そのまんまの題名です。3番号を見ると、次に書く「執拗なチャルダッシュ」と組み合わさっているようで、実際、同じような世界です。ですから、ここであまり書くと次で書くことがなくなってしまうのですが、微かに怪しい冒頭から、突然高音の輝かしいオクターブに変わり、また突然沈んでしまう、という構造のようです。
「チャルダッシュ」を聴いたからには、続けて次までいってください(笑)。「執拗なチャルダッシュ」 です。同じ雰囲気といいましたが、冒頭からして怪しさのレベルが違います。本当にジプシーが出てきそうな感じ、「あっ、そんな汚い手でピアノを触らないで!」みたいな(爆)。(変な偏見はいけませんね…)で、しばらく聴いていると、やっぱり急に輝かしい音が鳴ります。この突然さは何なのかと思ってしまいますが、これが聴くときの1つの楽しみでもあります。さて、「執拗なチャルダッシュ」は、この2つの音世界が何回か繰り返されます。そして、最後には高音部のオクターブが出てきて、キラキラした音…と思いきや、そのまま襲うように下ってきて、華麗な和音が鳴り、“いきなり”終わりです。
この2つのチャルダッシュとは別に扱われているのが「死のチャルダッシュ」 ♪ 。僕は最初にこの曲を聴いたときからその魅力に取り付かれてしまいました。前の2つの冒頭の怪しさとは質が違う、本当に呪われそうなイメージ。そのなかで優しさ、美しさ、恐さ、怒り、さまざまな表情がユーモラスに出てくる…、といえばいいのでしょうか???僕の日本語で表現できる世界を越しているので、ぜひご自分の耳で聴いて欲しいです(爆)。
3曲の中でどれが一番好きか、というと、迷わず「死のチャルダッシュ」です。でももちろん他の2曲も素晴らしい。いずれも始めに聴いたときから直感的にいいと感じたものです。こうして書いていると、ハンガリー狂詩曲とは曲の雰囲気が違うようにも思えてきたのですが、こんなことを考えているとまた面倒なことになりますので、やめておくことにします…。
「芸術家祝典行進」 S520ii
"Künstlerfestzug"
2004/05/14
とても恥ずかしいので伏せさせて頂きますが、これまでずっと僕はLができませんでした。周りを見ても数人を除いて皆できているLが、なぜか僕にはできなかったのです。もちろん悔しいのですが、練習とかそういうことより生まれつきの能力的な問題だろうと思い、半ば諦めかけていました。そこに今日M君がやって来て、一言コソッと教えてくれました。そんなことで…と思いましたが、実際にやってみると、見違えるほど上手くなっています! これまでずっと周りが羨ましかっただけに、大きな自信を持ちました。友達に聴かれたら絶対バカにされるぞと思いながらも、ほんとうに嬉しく感じました。
で、この気持ちをさらに盛り上げるために何か聴こうと無意識に思いました。こういうときは別に何でも聴けないことはないのです。でも、こんな喜びに溢れた時は、こういう時なりの最高の曲というものがあるのではないかと思いました。いろいろ見て、この曲に来たときに「これだ!」と思いました。「芸術家祝典行進」です。ふざけ半分だったり寂しかったり暗かったりというのがほとんど無く、ポジティヴでカッコ良い曲です。
するべき細かいことを済ませると、早速聴き始めました。
冒頭は少し暗めで、最初はここだけ聴いてこの曲を敬遠してしまっていました。しかし、すぐにパーッと明るく、というよりカッコ良くなります。最高の緊張感! そして僕は僕で、ボリュームをいくら上げてもそれに負けない強い感情が、出そうで出ない涙として表れてきます。それを感じるのがまた気持ちいい! 他の曲との違いは、やっぱり“メロディーの力”でしょうか。「『エフゲニー・オネーギン』よりポロネーズ」(チャイコフスキー=リスト)や「スペイン狂詩曲」に通ずるところもありますが、「芸術家祝典行進」の緊張感には敵わないように思います。
さて、しばらくすると、交響詩第12番「理想」と共通のメロディーが出てきます。さっきの部分には劣りますが、ここも親しみやすさがあって気持ちいいです。あとはこの2つの主題が組み合わさっていくようですが、最後の2分間ぐらいはもう見事としか言いようのない素晴らしさです。僕の気持ちのせいもあるかも知れませんが、異様な盛り上がりを見せます。
曲終了。改めて今日の選曲が適切だったと感じました。僕が盛り上がりすぎて、文章は冷静に書けていないかも知れません。そんな曲なんだと思ってください。以上(汗)。
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「勝利行進曲」 ♪ S233a
"Siegesmarsch"
2004/05/11
この曲は1870年頃の作曲です。リスト60歳ぐらいですね。リスト晩年の作品があまり一般的に有名でない理由の1つとして、曲の“親しみにくさ”が挙げられるでしょう。若い頃とは違う色・違う味を持った曲ばかりが遺っています。リストは自分でそれを意識して、わざと自分を変化させていったようにも思えるのです。しかし、年老いたリストは完全に重苦しく、あるいは淋しい、そういう人間だったでしょうか?たしかにそういう面もどこかにはあったでしょうが、そうでない面も少なからずあっただろうと考えられます(詳しい方ご教授願います)。30年近く前の「半音階的大ギャロップ」などのようなくだらない息抜きの音楽を、リストを外にこそ出さないものの密かに作っていたでしょう。…大分僕の想像の世界に飛んでしまいましたが、そんなプライベートな曲の1つだと思えるのが、この遺作の「勝利行進曲」です。
聴いてみれば分かりますが、何ともアホくさい行進曲です。音階が続く部分は、緊張感のカケラもないというと言いすぎだと思いますが、マジメな顔して弾くよりもバカみたいにヘラヘラ笑いながら弾いた方が似合いそうな感じです。あの部分にはイメージも湧きそうにありません。ただウケるだけです。途中の和やかなところも本気で書いた訳ではなく、完全にリラックスして即興的に作ったように思えます。聴衆を美しさに酔わせようという感じではありません。着飾った人たちがザワザワ言っている様子をただ映したニュース映像のよう、尖ったところがなく非常に曖昧な雰囲気です。
リストの場合、もっと知られてほしい曲が山ほどありますが、遺作のこの曲は有名になってほしくありません。リストが自分だけで弾いて楽しんでいたと思われるこの曲、晩年のリストは楽譜が出版されているというだけで恥ずかしがって嫌がるに違いありません。そういう“秘密”の雰囲気をぜひ残しておいてほしい。録音もハワードの世界初録音だけで充分なのではないでしょうか。できるだけ放っておいてほしいというのが僕の希望です。――などと言いつつ1人で聴いて楽しんでいるLOMです。矛盾するようですが、ぜひ聴いてみてください。
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