極私的曲紹介 9 ワルツ・ポルカ

忘れられたワルツ
第1番
第2番
第3番
3つの忘れられたワルツへの後奏
メフィストワルツ・ポルカ
メフィストポルカ





忘れられたワルツ

2003/9/8

 リストのワルツとしては、メフィストワルツよりは知名度が落ちるこの4曲。でも、晩年らしいやさしさがあります。

 まずは、何を弾こうかと探っている時期、MIDIを聴いて「これはいいかも」と思ったのですが、楽譜を持っていなかったので諦めた、「忘れられたワルツ第1番」…。それ以来「忘れられて」いたのですが、及川浩治ので久しぶりに聞き、復活しました。でも、ハワードは急ぎすぎです。個人的には、ゆっくりしたテンポを取っているアラウの演奏が一番好きです。最初聴いたとき、2番目の音が予想よりも遅れて鳴ったことで、なぜか感激した覚えがあります。あれぐらい遅い方が「忘れられた」って感じがするんじゃないですか?
 「忘れられたワルツ弟2番」は、冒頭の、明るい茶色をイメージさせるようなスタッカートの部分はよく聞き、気に入っているのですが、後はよく分かりません。
 「忘れられたワルツ第3番」はいい!!淋しげな最初の部分からして、最晩年の曲、といった感じがします。長い生涯を生ききったんだなぁ…、みたいな充実感(?)を感じて、大好き、なはずなのですが、これもやはりあまりよくは聞いていないので、特に後半はよく分からない、とだけしか書けません。
 近年になって見つかった曲らしい「忘れられたワルツ第4番」は、冒頭からあわただしくて、どうも好みではありません…。「焼けて無くなったりする前に見つかって良かった」という気にはなれません。


2003/12/12

忘れられたワルツには、メフィストワルツとは対照的に、淋しくもの悲しげでかつ美しいメロディーが並んでいます。何故かメフィストワルツの方が有名なようですが、僕はこちらも大好きです。

 「忘れられたワルツ第1番」
は、4曲中最有名です。でも僕は、最近はあまり聴かなくなりました…。あまりリストらしさがないのでしょうか。なんか普通の曲、という感じがします。

 「忘れられたワルツ第2番」は、短い単位のものがなめらかに続いていくような気持ち良さがあります。3拍の間ずっとトリルしかないところ(譜例1=結尾)があったりするのですが、それでも3拍子を感じられるようになっています。でも、聴いていて疲れる感じもあり、それが最近そんなに聞かなくなってしまっている原因でしょうか。第3番なんかにくらべたらウットリするような美しさも少ないですし。

(譜例1) 忘れられたワルツ第2番 S215/2 変イ長調 3/4



 一番の好みが「忘れられたワルツ第3番」です。濃い緑色に輝きと透明感を足したような美しさ。何度も繰り返される「ミファソーーー、ミファソーーー、(低音)ラーーミソドミファソ…」という所(譜例2)なんかは、作曲への諦めのようなものさえの感じさせます。少ない労力で美しい曲を作り上げたと言ったら、リストに失礼だと思いますが、この単純さゆえの美しさ、こういうことを考えてしまいます。
 ※「若しもその知覚された類似関係が的確で、すべて或る共通の中心に向って働いているときには、その事物は更に美しい。そこには真に統一がある。又、若しも、その成果に向って協力するために厳密に必要なものだけしか其処にない場合は、美は一層大きくなり、そこには単純さが生れる。」〔セナンクール作・市原豊太訳「オーベルマン」(岩波文庫) 第二十一信、上巻p.142〜143より〕

(譜例2) 忘れられたワルツ第3番 S215/3 変ニ長調 3/4



 「忘れられたワルツ第4番」はまだ聴き込んでいません。ちょっとズレたようなリズム感が気持ち悪いんです。曲の感じがほとんど頭に残っていないままで絞り出したイメージから言うと、豪華な(?)死後の世界を、軽くなった心で描いているようにも感じられます。1〜3番とは明らかに違うタイプの音楽、太陽系で言えば冥王星のようなものでしょうか。
 何か思ったよりかなり短い文章で終わってしまいましたが、実際に聴いてからこそ分かる魅力というものが大きいということでしょうか。そんなことを言ったら、曲を一生懸命言葉で説明しているこのサイトの存在意義は?という問題になってきますが、とりあえず曲の美しさには自信あります。これ以上余計なことを書くのは止めておきましょう。



「忘れられたワルツ第1番」 S215/1
"Valse oubliée No. 1"


2004/08/29

 晩年の傑作として自信を持ってお薦めする「4つの忘れられたワルツ」、の第1番、ですが、この曲だけちょっと仲間外れのような気がします。(第4番はとりあえず除外して、)第2・3番はしっかり“忘れられた”音になっているのに対して、こちらはどうも普通のワルツという感じが残ります。何が違うかというと、音の間が持つムードというか、それがまだ平凡に感じるのです。悪い曲とは思わないのですが。
 充分に“忘れられ”ていないからという訳ではありませんが、忘れられた「忘れられたワルツ」の中でこの第1番だけが有名になっています。第2番以降を知ってしまった僕には、この曲の愛好者の気持ちは完全には分からないのですが、確かに“忘れられた”感じがする部分も何ヶ所かあります。まず冒頭、気が狂ったというような音。ここは、おっとどうしたと思わせるでしょう。そこから親しみやすくなって、再び冒頭の音に戻ります。その後がなかなかいいと思っています。トリルが出てくると、忘れられたワルツ第2番の世界に大分近くなると思います。そして、amoroso(愛情豊かに)と記された部分、ここは独特な世界が広がっています。最後よく聞こえないように終わるのは、晩年の小品によくあるやり方です。
 もう一度繰り返します。悪い曲とは思いません。この曲が有名になるのはよく分かります――親しみやすいから。でも、4つの忘れられたワルツを並べられて、好きなのを1つだけと言われたとき、僕は迷わず第1番以外のものに食いつくでしょう…。
 第1番の中で、僕が上に挙げた点(のうちどれか)が好きだという方は、第2番以降も聴いてみることを強くお勧めします。ただ、気に入って頂ける自信はありません。別の世界ですから。それでも試してみる価値はあると思います。まぁ、詳しくはそれぞれの曲の紹介をご覧ください。
 忘れられたワルツをどれもまだ聴いたことがないという方にどう勧めればいいのか、ちょっと迷います。忘れられたワルツ第1番は聴くべきかと言われると、必ずしもそうではないように思えます。でも、いずれにせよ第2番以降は聴いてもらいたいので、その際わざわざ第1番を避けることはないだろう、というぐらいです。第2番以降を聴いたあとで第1番を聴くと、物足りなく感じてしまうかも知れませんので、「第1番」→「第2〜4番」という無難な順番で聴けばいいでしょう。
 演奏については、どれも特に嫌いという訳ではないように感じます。特筆すべきはアラウとワッツでしょうか。アラウはゆっくり路線を貫いた良演です。ワッツは冒頭の衝撃的な音とamorosoの部分の素晴らしさがあり、楽しめる演奏です。ルービンシュタインもなかなか個性的な演奏を聴かせてくれます。初心者向きにいいのはハワードだと思います。オーソドックスな素晴らしい演奏、さすが第1巻。及川浩治とジルベルシュテインは僕にはちょっとクセが強すぎます。リツキーは遅めでアラウには劣る感じです。個人的には、こういう曲こそフジ子・ヘミングに弾いてもらいたいのですが…。

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○クラウディオ・アラウ[3:58](5) [Amazon.co.jpの紹介ページへ]
○アンドレ・ワッツ[3:30](2/3) [Amazon.co.jpの紹介ページへ][Amazon.comの全曲試聴ページへ]
○アルトゥール・ルービンシュタイン[3:03](9) [Amazon.co.jpの紹介ページへ]
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「忘れられたワルツ第2番」 S215/2
"Valse oubliée No. 2"


2004/08/01

 この曲は、人が足を踏み入れたことのない、周りは海に囲まれている、そんな小さな無人島のイメージです。今はそんなものないようですけど。天然の植物が生い茂り、動物たち(あまり恐くないもの)が戯れている。気温は20℃ぐらいでしょうか。僕たちに言わせれば「快適で爽やかで最高」の場所なのでしょうが、そこにいる動物や植物はそんなことは何も考えていません。環境問題とか、人間のあたたかさとか、そんなものとは関係なく、ひたすら自然の中、生きています。
 で、このままだと「忘れられたワルツ第3番」に近い世界になってしまいます。第2番で強調されているのは、「忘れられた」雰囲気です。人間が支配しているように思える地球上で、この島が人に忘れられていることの不思議さ、我々の暮らす世界とはかけ離れた素晴らしさに対する驚き――、こういったものを音と音との間の空気(シャボン玉の中の空気のような気分でもありますが)に強く感じます(譜例1)。
 こんな雰囲気、リストの他のどの曲にも感じられませんし、他の作曲家の曲でも聴いたことがありません。こういった音を作り出せたこの曲は、相当なものだと思っています。
 曲の最後の方で、ちょっぴり邪悪な雰囲気を感じるところは、1人の人間が島にやってきたかなぁ、と考えてみました。でも、島で落ち着きを得るとすぐ元の雰囲気に戻るところを見ると、その人は島を無人のままに、そーっとしておいてくれたようです。
 さて、あのレスリー・ハワードもどうもこの曲を高く評価しているらしく、実はこの曲は、ハワードのリスト全集の一番最初の曲になっています。最初の曲は、愛の夢だろうか巡礼の年だろうかと思わせておいて、誰も知らない、それこそ“忘れられた”ようなこの曲を最初に持ってくる。ハワードは、「忘れられたワルツ第2番」に注目させ、有名になって欲しいと思ったのではないでしょうか。
 ところが、この曲は全然有名になりませんでした。非常に残念なことに、未だに人々から忘れられたままです。もっともっと知られることを強く願います。「忘れられたワルツ」だから忘れられたままであるべきだなどとは言いません。いくら有名になったところで楽譜は変わりませんので、この曲の“忘れられた”島のイメージが変わる訳がないのですから。ちょうど、無人島の写真には何年経っても人は写らないのと同じように――。
 まだ聴いたことがないという方は、実演を聴いてみることを強くお薦めします。親しみやすい「華麗なるワルツ」からの再使用(譜例2・3)があったり、曲の最後は珍しく高音の正直なきれいな和音(譜例4)を聴かせてくれたりしますので、リスト初心者の方でもあまり抵抗なく聴けるのではないかと思います。
 この曲、実は、ちょっと前までは、忘れられたワルツ第3番と同じ路線で、第3番には劣るものと思っていました。リツキーの演奏によってこの素晴らしい雰囲気に気付き、考えを改めました。曲の魅力を充分に伝える良い演奏だと思っています。ハワードも悪くはありません。この空気の臭いはしっかり伝わってきます。ただ、少し速すぎるせいか、リツキーと比べたらやや弱いかなぁ、という感じがします。

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(譜例1) 「忘れられたワルツ第2番」 S215/2 ♭♭♭♭ 3/4



(譜例2) 華麗なるワルツ(3つのワルツカプリース第1番) S214/1 ♭♭♭ 3/4



(譜例3) 「忘れられたワルツ第2番」 S215/2 ♭♭♭♭→♯♯♯♯→♭♭♭♭ 3/4



(譜例4) 「忘れられたワルツ第2番」 S215/2 ♭♭♭♭ 3/4






「忘れられたワルツ第3番」 S215/3
"Valse oubliée No. 3"


2004/08/29

 初めに、僕はこの曲を語るのに充分な誉め言葉を持ち合わせていないことをご了承ください。“とりあえず”書いておきます。  この曲、今のところ、リストの美しさの最高峰だと思っています。淋しさ漂う冒頭から、すぐに10度中心のきれいな響きが出てきます。淋しげなトリルの後は高温の豊かな響き。伴奏は2小節に1回規則的に現れる単音のみですが、何の不足も感じさせません。その後、高音のオクターブでどんどん盛り上がり、締めつけていきます。爆発した後は久しぶりの低音が現れ落ち着きます。そして再び瑞々しい高音、今度は伴奏が変わり、さらに感じるようになっています。しばらくの後、また久しぶりの低音に落ち着きながら高音も出てくるという見事な響き、そして高音の方のみ残り降りてきて、最後は消えるような3音。  ――という無意味な解説に、少し付け加えます。この曲、何に一番似ているかというと、夏の山の中、できるだけ涼しく、でも雪はなく、自然豊か…という贅沢な場所。あるかどうか、知りませんが。人は住んでおらず、まさしく“忘れられた”ところ。――音と音との間にそんな様子を感じます。で、曲は、リスト老人がそこに来たという物語? 大体は美しく和やかに進んでいきますが、真ん中の激しさは、老人の必死の抵抗でしょうか。ふと浮かんできた不安、忘れられることへの恐れ。でもそれを乗り越えて、後の“言葉で言い表せない”美しさがあります。  ………。これ以上駄文を書き連ねるには苦しさを感じます。やはり僕に書けるものではありませんでした。曲の魅力の1%も伝えきれていません・・・。  僕の文章を読んで、忘れられたワルツ第3番に興味を持てなかったのなら、僕の表現力の無さが悪いと思ってください。  何が言いたいか?  この逸品を是非聴いてください。聴いて頂けたら今回のこの文章は必要ありません。  演奏についてですが、リツキーは精緻さをコントロールできていません。ハワードで聴きましょう。僕はハワードでしか聴きません。
○ミハイル・リツキー[5:35](5) 
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「小さなワルツ(3つの忘れられたワルツへの後奏)」 S695d
"Petit valse (Nachspeil zu den drei vergessener Walzer"


2004/12/18

 あの忘れられたワルツへの後奏というのですから、短く美しい夢のような音をイメージされるでしょう。ところが、そんな甘いものではないのです。聴いて驚きますよ。
 リストがここで描いた世界は、普通題材になることにないものです。部屋の中にただ1人、天気は悪く外に明るい気配もない。プラスもマイナスも、感情と呼ばれるものがほとんどなく、ただ時間だけが過ぎていく。僕の日常からは考えも付かない…。タイトルを見れば分かるように、忘れられたワルツ第1〜3番を書き終えた後のリストなのです。
 明るい気分を表現した曲ならいくらでもありますし、悲しみやショックを表現した曲もたくさんあります。しかし、ここにはそのどちらもないのです。ただグターッとした世界。一体何事でしょうか?
 この曲が3つの忘れられたワルツとの対比だということは、容易に考えられます。僕はこう思っています。リストが最後の創造力をふりしぼって作った3つの忘れられたワルツ。そしてそれが出来上がった今、もはや作曲の力は全く残っていないことのアピールだと。つまり、3曲の後にこれを付けることで、忘れられたワルツはリスト最後の傑作だと言いたかったのではないかということです。(ただ、もしこれが正しいとしても、リストの本当の心ではないと思います。以後もいい曲を作っていますし、真にグッタリしていたら作曲などしないでしょう。この感じをうまく音で表現しているところが凄いと思うのです。)
 ところが、リストはそれをやめて、忘れられたワルツ第4番を作曲します。この「後奏」は長年忘れられていました。最近になってボロボロの状態で発見されたようです。ハワードさんが補筆して録音してくれています。ネット上でも聴ける(ハワードさんもこの曲に注目してほしいんだ!)ので、是非聴いてみてください。

○レスリー・ハワード(第56巻)[2:10](4/14) 
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メフィストワルツ・ポルカ

2003/12/09

 メフィストワルツは「ファウスト」に大いに関係あるという話で、ゲーテの「ファウスト」を読んでみようとしたのですが、第1部を読み終えた時点で挫折しました。そのうちまた読み始めるかも知れませんが…。
 さて、「メフィストワルツ第1番」は、ゲーテとは無関係で、レーナウという人の詩かなんかに基づいているようですが、これについてはちょっとよく分かりません。日本で手に入るものなのでしょうか?
 それはさておき、曲自体は2〜4番とは比べものにならないほどの知名度を持ち、馬に乗っているようなリズミカルな冒頭から、いかにも難しそうな所を多く含みつつ、猛烈なスピードで突き進んでいきます。途中少し穏やかな部分を経て、再び冒頭の雰囲気に戻り、何だか安定しないままなだれ込むように終わります。(と書きつつ、全体の構成はこれで良かったのかなぁ、と少し不安になるのですが、それをそのまま載せてしまうのがこのサイトの凄いところで……(笑))
 全体的に、暗くはないものの明るくはなく、技巧的でありながらどこか怪しさ漂う、そんな曲です。なお、4拍子のように聞こえると思いますが、実はこの3連符におもえるのが1小節で、だからこそワルツと言えるのでしょう。実は1〜4番ともにこのような作りになっています。

 「メフィストワルツ第2番」は、メフィストワルツ第1番より大分後の作曲だったと思いますが、あまりそれは感じません。リストは同じ時代でも全然違う雰囲気のものを平気で作っちゃいますからね。この曲は全体を通して「タララララッラ〜、タララララッラ〜、タラタラタラタラタラタラ、タラタラタラタラタラ」というフレーズがしつこく繰り返されます。あと騎馬隊風なところがあるのはメフィストワルツ第1番と同じです。(「タッタッ、ターラッラッ、ターラッラッ、ターラッラッ」)

 「メフィストワルツ第3番」は第4音を聞いた時点で不思議さが分かるのではないでしょうか。4曲中でも抜群に怪しくて面白いこの曲は、やっぱり晩年かなぁ、という気がします。
 全体的にもかなり分かりやすい作りではないかと思っています。最初に強烈なものを感じさせた後、やさしい和音でそれを繰り返します。その後は「ファ・ラ・レ」の和音から半音ずつ降下(譜例1)。そして少しベターっとした世界に入ります。なんか危険なものを、あまりに直接的に触れてしまった(?)ような感覚です。馬的なものもありながら、しばらくその組み合わせが続くのですが、残り2分というぐらいになると、怪しさが抜けて高音のオクターブが輝く場面(譜例2)があります。「あれっ、『忘れられたワルツ』だったっけ?」と思わせているうちに、また急に怪しくなり、最後はやっぱりあの4音、そして、曲にそのまま入れるべきではないように思わせるような、単純だが変なリズムで、半強制的に終わります。
 なんか、宇宙から囁かれているようにも思うこの曲は、いつも余韻が残ります。勝手に次の曲が流れ始めるのがイヤでイヤで、急いでストップボタンを押したりするんですね…。

(譜例1) メフィストワルツ第3番 S216 変ニ短調→イ短調 4/4→12/8=4/4



(譜例2) メフィストワルツ第3番 S216 変イ長調 12/8=4/4



(譜例3) メフィストワルツ第3番 S216 変ニ短調 12/8=4/4



 さて、「メフィストワルツ第4番」は未完成作品ということになっています。リスト自身まだまだ付け足したかったと思っていたことが分かっているらしく、ハワードは勝手に付け加えてくれています。そのままでもいいような…。
 で、ハワードが余計なことをしているせいで(笑)、この曲は聴き込みが足りないのですが、雰囲気的には、メフィストワルツ第1番ほどに純粋に激しくはなりきれない感じです。やはり馬は出てきますが(爆)、これもあまり面白くないように思います。
 ただ、「ターーラーー、ターーラーー、ターーーララ、ターーーララ」という部分なんかは、晩年らしい“叫び”が感じられて、時にはこれにピッタリの気分になることもあったりします。

 以上、こうしてみると各曲それぞれ個性的だなぁ、と改めて思わせられるのですが、それぞれに魅力があります。しょぱんのわるつとはまったくちがい、この3拍子で果たして踊れるのだろうかという素朴な疑問は残るのですが、とっても好きな曲です。ちょっと速すぎるハワードやクセの強いカツァリスの他に2〜4番はCDがあまりないのが残念ですが、是非聴いてみてください。
 …しかしメフィストフェレスは馬じゃないですよねぇ(困)…?


2004/03/01
 メフィスト関係でもう1曲付け加えておきます。
 さて、「メフィストポルカ」はここまで不健康なものではない、というより、踊りたくなるような楽しいものです。曲はさほど暗くはなく、愉快で楽しく、ちょっぴり怪しく進んでいきます。ギャロップイ短調のところで書いたような“安心感”のある曲ですが、やっぱり無調ではあるようです。特に知られているのが、最後に突如として現れる「ファ」の音。そして終止符。最初は戸惑いますが、ファの音が来ると分かってくると、この意外さについて行っているというよな、訳分からない誇らしさを感じたり。これは晩年の曲への入門として、是非聴いておくべき作品ではないでしょうか。





「メフィストポルカ」 S217
"Mephisto Polka"


2004/05/25

 この曲、どう足掻いても曲のイメージというものが思いつかないのです。突拍子もない喩えを言ってみなさんを楽しませてみたいのですが、この曲についてはちょっと無理のようです…。
 それは何故かというと、僕がこれを完全に“音楽”として楽しんでいるからでしょう。気持ち良く続いていく軽快なリズム(譜例1)が、この曲の魅力です。この手の聴き方をしている曲としては、もう1つ「ギャロップイ短調」が挙げられます。
 ただ、もちろんリズムだけでは曲は成立しませんので、メロディーというものがあります(普通の曲ならメロディーの方をまずきいているんですね)。この曲の場合、心地よい伴奏のリズムのせいで僕はあまり感じないのですが、メロディー本体は、軽快な伴奏とは違い、悲しげで淋しいものです。知ったかぶりの語を使うことが許されるのなら、“無調的”な音楽です。晩年の(分かりにくい)曲たちの中にこれが含まれることを気付かせてくれるのは、曲の最後に突如として現れる「ファ」音(譜例2)のみではないでしょうか。
 こういう淋しげなメロディーの曲は、気分が合わない時が結構あり、僕にとっては聴く機会がそう多くはないのですが、この「メフィストポルカ」は伴奏のおかげで圧倒的に親しみやすくなっています。対照的のような2つのものを重ねたことで一挙両得になったというおいしい曲です。

 演奏の比較も、僕はどうしても伴奏の方を優先的に聴いてしまいます。最も軽快でピョンピョン飛び跳ねているのはワイルドのライヴ録音、次いでカツァリス(ノンペダル!)です。逆にリヒテルは軽やかさが感じられず、あまり気持ち良くありません。個人的にはこの中間のハワードぐらいが一番ちょうどいいと思っています。
 初めて聴く方は、ワイルドは僅かに編曲がありますし、カツァリスは普通稿(S217i)と異稿(S217ii)とを重ね合わせて弾いている部分があったりしますので注意してください。
 また、この曲には元々長い繰り返しがありますが、リヒテル以外は無視してしまっています。リピートしたとして(ついでに拍手等も除いて)計算すると、それぞれの演奏時間は、ワイルド(5:45)、カツァリス(6:28)、ハワード(6:36)、リヒテル(6:37)の順となります。

アール・ワイルド[3:54](10) [Amazon.co.jpの紹介ページへ][Amazon.comの紹介ページへ][Amazon.co.ukの紹介ページへ][Amazon.deの紹介ページへ][Amazon.frの紹介ページへ][Amazon.caの紹介ページへ]
○シプリアン・カツァリス[4:17](7) [Amazon.co.jpの紹介ページへ]
レスリー・ハワード[4:29](1/10)(第28巻) [Amazon.co.jpの紹介ページへ][Amazon.comの全曲試聴ページへ][Amazon.deの全曲試聴ページへ]
スヴャトスラフ・リヒテル[6:52](7) [Amazon.co.jpの紹介ページへ]

(譜例1) 「メフィストポルカ」 S217 ♯♯♯ 2/4



(譜例2) 「メフィストポルカ」 S217 ♯♯♯ 2/4





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